◆杉並自民議員倶楽部代表(藤本なおや委員) 私は、杉並自民議員倶楽部を代表いたしまして、平成19年度杉並区各会計歳入歳出決算について意見の開陳をいたします。
 初めに、我が会派は、平成19年度杉並区各会計歳入歳出決算のすべてについて、これを認定するものであります。
 以下、認定理由を大きく3つの観点により、述べてまいります。
 認定理由の第1は、全庁挙げて歳出の見直し並びに歳入確保に努め、慎重な財政運営に努めた点であります。
 当該年度の我が国の経済は、一昨年秋に戦後最長のイザナギ景気を更新し、アメリカや新興国経済の活況を支えに、大企業を中心として、緩やかながらも景気は回復基調で推移したものの、企業業績に比べた雇用者所得の伸び悩みなどから、個人消費の盛り上がりには欠け、加えて年度後半には、資源価格の高騰やサブプライム問題などから金融市場が混乱するなどの影響が懸念された年となりました。
 このような中、平成19年度の予算編成に当たって、山田区長は、将来確実に訪れる人口減少社会を見据えて、次の世代へつなげる予算と位置づけ、区長就任以来一貫して取り組んできた内部努力の強化も一層進めてまいりました。
 その結果、19年度の一般会計は歳入歳出規模とも最大となり、歳入は1,600億4,033万円で前年度より5.7%の増、一方、歳出は1,512億8,441万円で前年度比6.5%の増となったものの、形式収支、実質収支ともに黒字を連続して維持していることは評価をするものであります。
 また、財政危機の指標を示す経常収支比率は、昨年度に続き適正範囲と言われる70から80%の間にとどめ、公債費比率も前年度比0.6ポイント下回り、過去5年間で最も低い値となりました。このことは、予算編成方針で区長が述べたとおり、後年度の負担を軽減し、将来を見据えた適切な財政運営の結果と評価をいたします。
 なお、実質収支比率については、前年度に引き続いて一般的に適正と判断される3から5%の範囲を超えており、これは、効率的な行政運営や行革などに努めた結果という評価に値する面がある一方で、会計年度独立の原則から見れば、執行上の問題並びに財源超過ともとらえられます。地域間の財政力格差が叫ばれる中、財政余力の指摘を払拭するためには、区民にはもとより、対外的にもわかりやすく区の財政状況や方針を開示する必要があり、さらには、実質収支比率や額について留意をしながら、活用方策にも今後の十分な検討を求めるものであります。
 また、昨年の6月に財政健全化法が制定され、今回の決算より新たな4つの財政指標が加わり、これにより、全国一斉に統一した基準で各自治体の客観的な財政状況の比較判断がなされるようになりました。当区においては、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率並びに将来負担比率のいずれも良好な財政状況と判断するものであります。
 しかしながら、9月30日、総務省から全国の健全化判断比率の速報値が公表され、このことによっても東京富裕論が再燃するおそれがあり、今後の税制改正を視野に入れた区財政への影響も懸念されることから、今回の結果に甘んじることなく、引き続き財政規律の維持向上を求めるものであります。
 認定理由の第2は、実施計画に基づき、さまざまな施策を迅速かつ効率的に展開した点であります。
 当該年度は統一地方選挙の年となったことから、前年に改定された実施計画は単年度修正版ではありましたが、その内容は、平成22年度の目標をしっかりと見据え、道筋をつけることに主眼を置いたものであり、実施計画156事業、計画額に対する執行率では92.4%となり、着実に事業の推進に努めました。
 特に我が国の社会問題となっております少子化問題は、喫緊に取り組まなければならない課題の1つであります。急激な人口減少社会は将来の労働力人口の減少をも意味し、我が国の社会経済に大きな影響を与えることが懸念されるほか、高齢者人口の増加は、年金、医療、介護費の増大にもつながり、さらには防犯や防災活動といった地域共同体の社会活動の維持さえ困難な状況に陥るなど、地域の存立基盤にもかかわる問題にも波及することが考えられます。
 当区においても、少子化が進行する中、区長は、平成19年度予算を、次代を担う子どもたちを育て、教育環境を整備する絶好の機会ととらえ、少子化対策と教育改革に対し重点的に予算を配分いたしました。
 このように、子ども、子育てが施策の主要キーワードとなったこの年は、杉並子育て応援券の実施、保育、学童クラブ施策の充実、さらに、我が会派としても区長に対して要望いたしました妊婦健診の無料化や乳幼児医療費助成制度を小中学生までに拡大することなどによって、積極的に子育て支援の整備を構築し、実際に出生率の回復、年少人口の増加につながった点は高く評価するところであります。
 今後とも効果的な少子化対策の実施を行っていくためには、施策相互の連携や点検、評価の徹底、さらには支援策の周知と利用しやすさといった視点にも配慮し、子育て支援策を未来への投資と位置づけ、一過性のものとならないよう、持続的な取り組みを期待するものであります。
 認定理由の第3は、先行き不透明な経済情勢や税制改正による税収の流動化などを的確にとらえ、21世紀ビジョンと実施計画を実現するため、全庁挙げて行財政改革に取り組んだ点であります。
 当該年度は、平成22年度の人が育ち、人が活きる杉並区の実現に向けての道筋をつけるため、これを側面から支える第3次行財政改革実施プランに基づき取り組んだ結果、区が抱える区債残高はピーク時の平成12年度より約60%もカットし、減税補てん債についても昨年度に引き続いて発行を取りやめる一方、財政調整基金を取り崩さない運営を行うことにより残高確保に努めたことは、将来への道筋を確かなものとする姿勢と大いに評価をいたします。
 さらには、職員定数削減にも一層取り組み、当該年度100人削減目標に対し78人の削減にとどまりましたが、22年度までに1,000人の職員定数を削減する目標に向けては着実に前進していることもあり、平成19年度には35億1,000万円余の財政効果を得、前年度に比べて18億6,000万円もの増となったことは、区長の行革にかける強い意思のあらわれと高く評価するものであります。今後ともさらなる区長のリーダーシップのもと、すべての職員が同じ目標に向け、心を1つにして取り組まれることを願うものであります。
 以上、3つの観点にわたり決算の認定理由を述べてまいりましたが、終わりに当たり4点ほど要望いたします。
 まず1点目は、今後の景気状況の影響を踏まえた効率的かつ効果的な行政運営についてであります。
 先月の日銀短観では、大企業、製造業の業況判断指数が5年3カ月ぶりにマイナスに落ち込むなど、日本経済の後退局面入りを印象づけ、さらにアメリカのサブプライムローン問題を起点として、リーマンショックによる金融不安や世界同時株安は、景気後退が長期化するおそれも出てきており、一部メディアでは、世界恐慌の足音が聞こえてきたと報道する状況になっております。
 我が国にとっては、80年前、関東大震災などの影響から昭和金融恐慌が起こり、これに加えて1929年10月24日、ニューヨーク株が大暴落し、いわゆるブラックサーズデーが世界恐慌の引き金となって、その影響から当時日本の失業率は20%を超え、農作物は売れない上に冷害や凶作の大打撃を受け、欠食児童の急増や人身取引が横行するなど、危機的状況に陥りました。80年前に先人たちが経験した世界恐慌の悪夢は、これまで私たちは歴史的事実の1つであるものと思っておりましたが、昨今の世界的な株価の下落は、既に実体経済に悪影響を及ぼしており、悪夢の再来の可能性も否定できない状況になっております。
 このように、いつ、何が原因となって株価が急落をし、恐慌に突入するかわからない先の見えない経済状況にあって、杉並区にはこれまで以上に慎重な財政運営を求めるものであります。
 よって、我が会派は、来るべきときに備え、基金を積み増すことにより、自治体の体力を財政状況が良好な今のうちにつけておくべきと考え、また、区長3期目の公約の大きな柱の1つでもある減税自治体構想については、将来を見通した財政運営のルールづくりという観点から一定の理解を示すものではありますが、無理な積み増しによって区民福祉に弊害があっては、元も子もありません。そこで、非常に難しいかじ取りであることは承知をしておりますが、住民ニーズも的確にとらえながら、十分に区民への説明責任を果たし、バランスのよい行政運営を求めるものであります。
 要望の2点目は、都区制度改革と国への要望についてであります。
 平成18年度に、都区のあり方を根本的かつ発展的に検討するために都区のあり方検討委員会が設置をされ、当初のスケジュールでは、今年度末までに都区のあり方の基本的方向が示されることとなっております。現在、都区の事務配分、特別区の区域のあり方、税財政制度などについて議論が進められているところでありますが、時間的にかなり厳しくなってきている中にあって、まず444項目に及ぶ事務移管の道筋をつけ、それに伴う財源の問題を整理した上で、効率的な自治のあり方が今後どうあるべきかという特別区の枠組みに議論が展開されていくべきものと考えます。そしてその背景には、常に地方自治の主役は住民であることを忘れず、都と区の新しい関係に向けて議論を尽くし、効率的に検討が進まれることを望むものであります。
 また、正念場を迎えつつある国の進める地方分権改革については、改革推進委員会から示された第一次勧告を踏まえ、国と地方の役割分担を明確にし、真の地方分権改革が実現されるよう、国に対しての一層の働きかけを求めるものであります。
 一方で、東京富裕論という幻想に基づいて財政制度等審議会などで議論がされている地方税の偏在を是正しようとする動きは、見過ごすわけにはいきません。
 そもそも東京富裕論なる横暴な考え方は、23区の積立基金残高や福祉の上乗せ政策を、あたかも財源が余っているからできるものだという偏った見方から立脚をしており、これらは、杉並区においても、職員定数の削減に見られるような自助努力をこれまで強い決意で進めてきた行財政改革による財政効果のたまものであって、私どもの会派は、そうした区の考え方に賛同し、支えてまいりました。しかしながら、三位一体改革の根本的解決を後回しにし、本来国の責任で解決すべき地方財源の確保の問題を地方自治体同士の税収格差の問題にすりかえるような行為は、地方税の応益原則を無視したものであり、地方分権改革の流れに逆行するものであります。
 よって、自由民主党に党籍を置く我が会派としても、今後の動向を注視しながら、必要に応じて働きかけてまいりますので、区としても、私どもと連携を密にしながら、地方固有の税を地方間の財源調整に使われないよう、国に対して引き続き強く求めていただきたく要望するものであります。
 要望の3点目は、将来を見据えつつ、当面する区の施策の課題に対する対応についてであります。
 山田区長は、これまでの杉並改革の経験をもとに、景気に左右されない強固な財政基盤を築き、ひいては将来の住民税減税を視野に入れて発足した減税自治体構想研究会での検討も大詰めを迎えたところであります。研究会の答申の後は、いよいよその具体化という段階を迎えることと思いますが、その際は、これまで以上に、減税自治体構想研究会で議論されてきた内容や問題点について区民にわかりやすく公表し、広範な意見を求め、議論を深めた上で、全国の自治体に先駆けた新しい自治のあり方を構築していかれるよう求めるものであります。
 また、現在行われているこの10年の山田区政の総点検については、平成22年度の人が育ち、人が活きる杉並区の実現に向け、いかに区民サービスの向上を図っていくのかという目的達成を忘れることなく、総点検で得られた結果を十分に精査をし、改めるところは果断な決意によって改めながら、そのビジョンを早期に示されることも、あわせて求めるものであります。
 要望の4点目は、教育についてであります。
 初めに、杉並第十小学校における転落事故による学校の安心・安全についてであります。
 意見を述べる前に、私ども杉並自民議員倶楽部一同は、このたびお亡くなりになられました児童のご冥福を改めてお祈り申し上げる次第であります。
 本来、児童生徒が安全な環境の中、安心して毎日楽しく学校生活を過ごしていくはずの学びやで痛ましい事故が起こってしまったことは、痛恨のきわみであります。今後このような事故を二度と繰り返さないよう、区も迅速に対応したことは承知をしておりますが、改めて学校施設の安全管理には徹底して取り組むよう、強く求めるものであります。
 また、学校設置者である区長、そして学校責任者である教育長に対し、責任のとり方を追及する声が議会でも上がりましたが、その前に、翻って私たち議会は、行政をチェックする機関として、今回のような学校における危険を事前に察知をし、指摘できなかったことによる責任の一端はなかったのだろうか。少なくとも私どもの会派は、自らに問いかけ、顧みる必要性を強く感じております。今後このような事故が二度と起こらないよう自ら猛省をし、議員として与えられた職務を遂行していくことも、あわせて表明するものであります。
 教育における2つ目の要望は、師範館の運営についてであります。
 この問題については、今回の決算委員会でも議論になったところでありますが、そもそも杉並師範館は、地方分権改革で区独自に教員採用ができることになった制度改正を受け、杉並区が独自に教員の養成、採用を実施するために、杉並区基本計画に基づき設置した教師の養成機関であると我が会派は認識をしております。また、師範館を教育委員会の内部でなく民間団体としたことについては、有為な教師を育成するために、人材育成にすぐれた経験を持つ民間人を広く集めるために、公益性を持った任意団体としたと理解をしております。こうした設置目的と経緯を十分に踏まえ、教育委員会は、この事業は日本の教育界に風穴をあける大きな意義ある事業であるという自信と誇りを持って、正々堂々と杉並に根差した教師を育成するために、今後も鋭意努力されることを要望するものであります。
 なお、教育基本条例などの制定や学校統廃合などについては、これから本格的にその姿が示され、教育施策の主要な論点になっていくかと思いますが、いずれにしても、あすの杉並を担う子どもたちのことを第一義に考え、教育を区民全体の問題として周知しながら、さらなる議論を積み重ねることを要望いたします。
 さて、山田区長にとって、今回の決算議会が終われば、いよいよ来年度の予算編成に本格的に取り組まれることと存じます。このことはすなわち、山田区政3期目の折り返しを意味することであり、自らに多選自粛をしいている区長にとっては、在任11年目というスパンは、マラソンで例えるならば、ゴールの競技場がすぐそこに見えてきているわけであります。しかし、そのゴールは終わりを意味するものではなく、これからも長く続いていく区政の道にとっては、新たな始まりでもあります。したがって、山田区長におかれましては、目の前に迫るゴールに全力で突き進みながらも、これからの行政運営には、終わりは始まりということをしっかりと見据えて諸事に当たっていただきたく要望するものであります。
 一方で、行政のチェック機関として議会の一員を構成する私ども杉並自民議員倶楽部は、このたびの決算審査を迎えるに当たり、各種区内団体の皆様と意見交換を行い、現在の区政に対して抱いている不満や率直なご意見を賜りながら質疑に臨んでまいりました。私たち会派は、このような区民の声の1つ1つを大切にし、時には、今般会派として要望いたしました原油高騰に対する特別融資制度のように、行政に対し迅速な対応を求める活動を、今後も積極的に展開してまいりたいと考えております。
 また、それとともに、区政運営全般については、的確な時代認識と広い視野を持って、責任ある立場から、ただ行政にゆだねるだけでなく、行政と連携を図りながら、自らが区民に対し適宜説明責任と結果責任を果たしていく覚悟でございます。この私どもの思いをぜひとも区長初め行政当局に改めてご理解をしていただき、当委員会において我が会派から申し上げました意見、要望並びに我が会派が聞き取りを行いました各種団体などの要望は区民の生の声ととらえ、今後の施策実施や平成21年度予算編成に十分留意されることを願うものであります。
 最後に、本委員会の審議及び資料作成に誠意を持ってご協力いただきました区長初め理事者、職員の皆様、公平な委員会運営に努められました正副委員長に改めて感謝を申し上げ、意見の開陳とさせていただきます。